トラウマを解消できず内定辞退
HさんがA社の内定を断りたい、と申し出てきたのは、A社人事担当者のアテンドによるHさんの予定配属先上司とHさんとの顔合わせの直後だった。次期上司はよく覚えていなかったらしいが、Hさんはこの上司と面識があるらしい。我々はHさんの心変わりの理由を尋ねた。「私の上司になるという彼、忘れもしない顔ですよ。今から二〜三年前、A社に自社製品の営業に行ったことがあったんです。その時に対応したのが、彼でした。ひどい対応でしてねえ。
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完全にこちらを見下した扱い。散々製品に対しての文句やイヤミを言われた後、まるで塩でもまくように追い返されたんです。確かにこちらが営業する立場だったとは言え、耐えがたくって。ああ、A社っていい会社だと思っていたけど、こんな人もいるんだなあって強烈に印象に残っているんです。まさかあの人が私の上司になるとは……」Hさんとしてはショックを隠しきれないらしい。かといって、トラウマを解消することもできず、A社もそれを理由に配属先を変えるというわけにもいかず、どうにもならないままこの縁談はお流れとなってしまった。狭い業界内を日々動き回る営業の面々が、狭い業界の中で転職する場合、どこでどんな縁が待ち受けているかわからない。もちろん、この縁がプラスに働くこともあるが、Hさんの場合は裏目に出てしまったようである。日頃から応募先との縁を大切にするべき、と思っている我々としては、過去の縁も縁は縁ということで彼の意志を尊重する次第なのである。
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